●若い世代を中心に熱狂的に支持された小説の映画化

　2008年、パトリック・ネスの小説「〈混沌 カオス の叫び 1 〉 心のナイフ」が出版され、その独創的なアイデアが、特に若者たちから熱狂的に支持された。ネスはその理由を、「ティーンエージャーたちは、この小説に遠い未来を見るのではなく、彼らの日常生活がエモーショナルに表現されていると感じている」と分析する。映画化にあたって、ネスが自ら脚本を手掛けることになり、クリストファー・フォードが共同執筆にあたった。フォードは、「人間がある惑星に到着し、とんでもない状況によって高度な技術を失ってしまったとしたら、どんなことが起きるかを描いた SF アドベンチャーだ。そして、少年と少女が相手との接し方を模索してゆく物語でもある。若者たちにとって、深く共感できるテーマだからこそ、あれほど多くの読者を惹きつけた」と解説する。

●豪華かつ実力派が揃ったイメージ通りのキャスティング

　『スター・ウォーズ』3 部作で勇敢なレイ役を演じたデイジー・リドリーも、原作ファンの一人だ。ヴァイオラ役をオファーされたリドリーは、この物語が見せてくれるのは、「感情のディストピアよ。そして、人々がどんな反応が返ってくるか考えもせずに世界に向けて発信してしまう、今のソーシャルメディアの延長線上にあるものね」と語る。トッド役には、スパイダーマンを演じてきた、トム・ホランドが選ばれた。製作の ダグ・デイヴィソン は、「トムは、ある種のタフさを体現しているが、その裏に純真さもある。トッドは、まさにそういう青年だ。でも、それらを併せ持っている俳優は、なかなかいない」と語る。ニュー・ワールド全体を支配することを目指し、既に自分の名前を冠した開拓地の支配者となっている、非情で権力欲の強いプレンティス役は、マッツ・ミケルセンに依頼された。ミケルセンはプレンティスについて、「彼がボスであり、誰も太刀打ちできない」と語る。アーロン牧師と呼ばれる元司祭を演じるのは、デヴィッド・オイェロウォ。信徒を持たず、村の恐ろしい秘密に苛まれる牧師は、自分のノイズを通して憎しみと怒りと復讐心を吐き散らす。