鉄条網の世界史

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  • 定価: (本体円+税)
発売日:
2019年01月24日
判型:
文庫判
商品形態:
文庫
ページ数:
304
ISBN:
9784044004545
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鉄条網の世界史

  • 著者 石 弘之
  • 著者 石 紀美子
  • 定価: 円 (本体円+税)
発売日:
2019年01月24日
判型:
文庫判
商品形態:
文庫
ページ数:
304
ISBN:
9784044004545

潜在能力を秘めたローテク兵器が、人間社会に苛烈な運命をもたらしている

農作物を家畜などから守ることを目的に約160年前に発明された鉄条網は、いつしか人と人とを隔てる強力な暴力兵器へと変貌を遂げた。先住民が押し込められた居留地、アウシュヴィッツ強制収容所、アメリカーメキシコの国境――著者は世界中から資料を掘り起こし、現地取材を重ね、人間の外敵排除の心理がこのシンプルな道具とともに顕在化し、爆発的に膨張したことを明らかにする。鉄条網を通して見る、もう一つの近現代史。 農作物を家畜などから守ることを目的に約160年前に発明された鉄条網は、いつしか人と人とを隔てる強力な暴力兵器へと変貌を遂げた。先住民が押し込められた居留地、アウシュヴィッツ強制収容所、アメリカーメキシコの国境――著者は世界中から資料を掘り起こし、現地取材を重ね、人間の外敵排除の心理がこのシンプルな道具とともに顕在化し、爆発的に膨張したことを明らかにする。鉄条網を通して見る、もう一つの近現代史。

※画像は表紙及び帯等、実際とは異なる場合があります。

もくじ

(主なもの)

第一章 西部開拓の主役
カンザス州の「鉄条網博物館」/切実な柵の不足/万能フェンスの登場/入植者が必要とした柵/ウシの大軍がやってきた/牧場主と入植者の戦い/職を失うカウボーイ

第二章 土壌破壊と黄塵
加速する西部開拓/鉄条網が変えた生態系/開拓進む大平原/土壌破壊の米国史/大型農業機械の導入/大砂塵の襲来/放牧規制がはじまる

第三章 塹壕戦の主役
戦場に出現した鉄条網/日本軍が手を焼いた鉄条網/塹壕戦のはじまり/西部戦線異常なし/戦場のクリスマス/日本への導入/鉄条網と現代戦

第四章 「人種の罪」と憎悪のフェンス
強制収容所の歴史/南アフリカの植民地化/ダイヤ・ラッシュ/各収容所の劣悪な環境/スペイン内戦の悲劇/アウシュヴィッツの殺人工場/元収容者が苦しむ後遺症/人間の資源化/旧ソ連の強制収容所/逆境でも花を愛でた日系

第五章 民族対立が生んだ強制収容所
南アのアパルトヘイト政策/活動家の迫害/集団墓地になった五輪会場/「民族浄化」と集団強姦/サラエボの花/世界を「欺いた」映像/戦争と情報戦/最後の逃亡戦犯を拘束

第六章 国境を分断する鉄条網
ベルリンの分断/ヨルダン川西岸の壁/壁を超えた臓器提供/米メキシコ国境/世界最大の麻薬密輸ルート/中国・北朝鮮の壁/新たな万里の長城/タイ・マレーシア国境

第七章 追いつめられる先住民
大平原を分断した鉄条網/チェロキー族の悲劇/ラストサムライ/遅きに失した先住民保護/グアラニー族の悲劇/死に急ぐ若者たち/ケニア独立運動時の裁判開始/ウサギ防除フェンス

第八章 よみがえった自然
鉄条網は自然を呼び戻す/朝鮮半島の軍事境界線/チェルノブイリ原発三〇キロ圏/再導入された希少動物/科学者の反目

「鉄条網の世界史」感想・レビュー
※ユーザーによる個人の感想です

  • 新聞記者、国連職員、大学教授等の職歴を渡ってきた著者による2013年刊『鉄条網の歴史』を加筆・改題した文庫版。タイトルをより丁寧にするなら『鉄条網に彩られた暴力の歴史』といったところか。鉄条網。それは極め 新聞記者、国連職員、大学教授等の職歴を渡ってきた著者による2013年刊『鉄条網の歴史』を加筆・改題した文庫版。タイトルをより丁寧にするなら『鉄条網に彩られた暴力の歴史』といったところか。鉄条網。それは極めてシンプルかつ低価格、軽量で取り扱いも簡便にして、効果的にその場を「分断」する世紀の発明。それはマニフェスト・デスティニーに沸く西部開拓時代のアメリカで生まれ、またたく間に世界各地、縦横無尽に広がっていった。 …続きを読む
    活字スキー
    2021年01月26日
    28人がナイス!しています
  • 鉄条網を「威圧的」だったり「ダーク」と感じるのは私だけではないはずだ。鉄条網(有刺鉄線)は1874年にアメリカで生産が開始された。当初は西部開拓時代であり、広大な土地で農作物を家畜から守る為に考えられた。 鉄条網を「威圧的」だったり「ダーク」と感じるのは私だけではないはずだ。鉄条網(有刺鉄線)は1874年にアメリカで生産が開始された。当初は西部開拓時代であり、広大な土地で農作物を家畜から守る為に考えられた。木材の不足や金属線だけではバッファローに突破されたりなどの事情があった。この発明が、先住民族の隔離という「人と人の隔離」へ使われ、戦場では防衛線となった。本著の後半のテーマになる国境分断や強制収容所の歴史は、国連勤務経験のある著者の視点と知識が盛り込まれるが、鉄条網本来の歴史からは逸れていく。 …続きを読む
    4fdo4
    2019年04月29日
    17人がナイス!しています
  • 何の変哲のない「トゲ付き鉄線・鉄条網」は開拓時代の米国で誕生!当初は牧場の家畜を囲う目的で発明され、安価で効率的で大量生産可能になったの背景に需要が広がる。鉄条網の普及によりカウボーイの激減…だけにと 何の変哲のない「トゲ付き鉄線・鉄条網」は開拓時代の米国で誕生!当初は牧場の家畜を囲う目的で発明され、安価で効率的で大量生産可能になったの背景に需要が広がる。鉄条網の普及によりカウボーイの激減…だけにとどまらず、草原などの本来の生態系のも変化をもたらした。鉄条網は戦争にも登場する。敵兵の侵入を防ぐ防御の役割を果たす。強制収容所などでの強制的な人の収容、国境における国と国の分断…農業から軍事や隔離…鉄条網が世界史に及ぼした大きな影響に驚いた。 …続きを読む
    リキヨシオ
    2020年04月08日
    16人がナイス!しています

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著者紹介

石 弘之(いし ひろゆき)

1940年生まれ。東京大学卒業後、朝日新聞入社。96年より東京大学大学院教授、ザンビア特命全権大使などを歴任。
主な著書に『地球環境報告』『感染症の世界史』ほか多数。

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