かわうそ堀怪談見習い

  • 定価: (本体円+税)
発売日:
2017年02月25日
判型:
四六判
商品形態:
単行本
ページ数:
208
ISBN:
9784041048313

かわうそ堀怪談見習い

  • 著者 柴崎 友香
  • 定価: 円 (本体円+税)
発売日:
2017年02月25日
判型:
四六判
商品形態:
単行本
ページ数:
208
ISBN:
9784041048313

芥川賞作家が「誰かの不在の場所」を見つめつつ怖いものを詰め込んだ怪談集

わたしは「恋愛小説家」と肩書きにあるのを見て、今のような小説をかくのをやめようと思った。恋愛というものにそんなに興味がなかったことに気づいたのだ。これからなにを書こうか。環境を変えるため、三年住んだ東京を離れ、中学時代に住んでいた区の隣り、かわうそ堀に引っ越した。そして、考えた末に怪談を書くことにした。そう決めたものの、わたしは幽霊は見えないし、怪奇現象に遭遇したこともない。取材が必要だ、と思い立ち、たまみに連絡をとった。中学時代の同級生・たまみは、人魂を見たことがあるらしいし、怖い体験をよく話していた。たまみに再会してから、わたしの日常が少しずつ、歪みはじめる。行方不明になった読みかけの本、暗闇から見つめる蜘蛛、こっちに向かってきているはずなのにいっこうに近くならない真っ黒な人影、留守番電話に残された声……。そして、たまみの紹介の商会で幽霊が出るとの噂がある、戦前から続く茶舗を訪れる。年季の入った店内で、熊に似た四代目店主に話を聞くと、絶対に開けてはいけないという茶筒、手形や顔が浮かぶ古い地図があるという。そして、わたしはある記憶を徐々に思い出し……。わたしの日常は、いつからこんなふうになっていたのだろう。別の世界の隙間に入り込んでしまったような。柴崎友香が、「誰かが不在の場所」を見つめつつ、怖いものを詰め込んだ怪談作品。 わたしは「恋愛小説家」と肩書きにあるのを見て、今のような小説をかくのをやめようと思った。恋愛というものにそんなに興味がなかったことに気づいたのだ。これからなにを書こうか。環境を変えるため、三年住んだ東京を離れ、中学時代に住んでいた区の隣り、かわうそ堀に引っ越した。そして、考えた末に怪談を書くことにした。そう決めたものの、わたしは幽霊は見えないし、怪奇現象に遭遇したこともない。取材が必要だ、と思い立ち、たまみに連絡をとった。中学時代の同級生・たまみは、人魂を見たことがあるらしいし、怖い体験をよく話していた。たまみに再会してから、わたしの日常が少しずつ、歪みはじめる。行方不明になった読みかけの本、暗闇から見つめる蜘蛛、こっちに向かってきているはずなのにいっこうに近くならない真っ黒な人影、留守番電話に残された声……。そして、たまみの紹介の商会で幽霊が出るとの噂がある、戦前から続く茶舗を訪れる。年季の入った店内で、熊に似た四代目店主に話を聞くと、絶対に開けてはいけないという茶筒、手形や顔が浮かぶ古い地図があるという。そして、わたしはある記憶を徐々に思い出し……。わたしの日常は、いつからこんなふうになっていたのだろう。別の世界の隙間に入り込んでしまったような。柴崎友香が、「誰かが不在の場所」を見つめつつ、怖いものを詰め込んだ怪談作品。

※画像は表紙及び帯等、実際とは異なる場合があります。

もくじ

目次

〇 一 鈴木さん
二 台所の窓
三 まるい生物 四 文庫本
五 雪の朝
六 蜘蛛
七 雪の夜
八 電話
九 一〇 一一 一二 足音
一三 桜と宴
一四 光
一五 茶筒
一六 ファミリーレストラン
一七 三叉路
一八 山道
一九 影踏み
二〇 地図
二一 観光
二二 喫茶店
二三 幽霊マンション
二四 夢
二五 宮竹さん

「かわうそ堀怪談見習い」感想・レビュー
※ユーザーによる個人の感想です

  • 芥川賞作家、柴崎友香の怪談の試み。「恋愛小説家」のレッテルを返上すべく怪談を書こうとする小説内作家が主人公。彼女の模索がプロットを形作るという構成。かつての円朝や鏡花とは比べようがないが、それでも独自 芥川賞作家、柴崎友香の怪談の試み。「恋愛小説家」のレッテルを返上すべく怪談を書こうとする小説内作家が主人公。彼女の模索がプロットを形作るという構成。かつての円朝や鏡花とは比べようがないが、それでも独自のスタイルの怪談を描き出すことには成功している。ただ、なんだかアマチュアっぽさが抜けきらないようだ。もっとも、そこが本書の特質なのだが。初出は「野生時代」等への連載だが、まだ続きが書かれるのだろう。続篇も購入するかと言えば、私の中ではこれで完結といったところか。 …続きを読む
    ヴェネツィア
    2019年12月20日
    460人がナイス!しています
  • つま先がひんやりの一冊。これはなかなか好みの世界観。怪談小説家へと転身中の恋愛小説家が、周りや自分自身の日常の不思議体験を集めて綴っていくというストーリー。全身じゃなくて、つま先ちょんと水に浸したよう つま先がひんやりの一冊。これはなかなか好みの世界観。怪談小説家へと転身中の恋愛小説家が、周りや自分自身の日常の不思議体験を集めて綴っていくというストーリー。全身じゃなくて、つま先ちょんと水に浸したようなひんやり感がいい感じ。ごく普通の日常に紛れ込んだ違和感はまるで不思議と怪異の合いの子みたい。はっきりと怪異と断言できないどっちつかずの取り残され感の連続を楽しめた。電話に残されたメッセージといい、家の中での日常にまつわるゾワリは一番効くかな。あくまでも見習い中という、怖さのゆるさを感じるこのタイトルも好き。 …続きを読む
    ちょろこ
    2024年08月07日
    122人がナイス!しています
  • タイトルはもちろん、フジモトマサルさんの表紙、挿画が柴崎さんの世界観に合っていて、とても読んでいて心地よい優しい怪談でした。怪談ばかり読みふけってると、ふと、何か気配を感じた“気がする”のは、実は私もよ タイトルはもちろん、フジモトマサルさんの表紙、挿画が柴崎さんの世界観に合っていて、とても読んでいて心地よい優しい怪談でした。怪談ばかり読みふけってると、ふと、何か気配を感じた“気がする”のは、実は私もよくあります。でも、私の場合は絶対に視えてないですし、絶対に視たくないです(苦笑)。印象に残ったのは、つがいの蜘蛛のお話「蜘蛛」、仲の良さそうな老夫婦の会話が聞こえる「喫茶店」、また「地図」に登場する四代目と語り手の恋の行方!?です。また続編にはその辺りも進展してて欲しいところですが、それはないか…。 …続きを読む
    nuit@積読消化中
    2017年05月28日
    121人がナイス!しています

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