騙し絵の牙

2018年本屋大賞ノミネート

  • 定価: (本体円+税)
発売日:
2017年08月31日
判型:
四六変形判
商品形態:
単行本
ページ数:
384
ISBN:
9784040689043

2018年本屋大賞ノミネート

騙し絵の牙

  • 著者 塩田 武士
  • 写真 大泉 洋
  • 定価: 円 (本体円+税)
発売日:
2017年08月31日
判型:
四六変形判
商品形態:
単行本
ページ数:
384
ISBN:
9784040689043

【2018年本屋大賞ノミネート作!】【大泉洋主演で映画化、始動!】

出版界と大泉洋という二つの「ノンフィクション」を題材に書く社会派にして本格ミステリー

 『罪の声』を発表し、社会派ミステリーの新たな旗手に名乗り出た、塩田武士。第七回山田風太郎賞を受賞し「本屋大賞2017」第三位に輝くなど、日に日に支持の声が高まるなかで刊行された『騙し絵の牙』は、ノンフィクションを題材としている、という点で『罪の声』と共鳴する。ひとつは、市場規模は右肩下がりで救世主到来を待つ、出版界およびエンタメ産業の現状というノンフィクション。もうひとつは、誰もが知る国民的俳優である、大泉洋の存在というノンフィクションだ。奥付には、次のようなクレジットがある。「モデル 大泉洋」。映像の世界には最初から俳優のイメージを取り入れた役を作ろう、という「当て書き」の文化がある。本書は、主人公に大泉洋を「当て書き」して執筆された、前代未聞の小説だ。
 主人公は出版大手の薫風社で、カルチャー誌「トリニティ」の編集長を務める速水輝也。40代半ばの彼は、同期いわく「天性の人たらし」だ。周囲の緊張をほぐす笑顔とユーモア、コミュニケーション能力の持ち主。部下からの信頼も厚いが、苦手な上司・相沢から廃刊の可能性を突きつけられ、黒字化のための新企画を探る。芸能人の作家デビュー、大物作家の大型連載、映像化、企業タイアップ……。
 編集部内の力関係を巡る抗争やきな臭い接待の現場、出版業界に関する深い議論のさなかでも、ひとたび速水が笑顔を繰り出せば硬い空気がふっとやわらぐ。ひょうひょうとした速水の語りを発端とする登場人物たちの掛け合いがいちいち楽しい。相手も面白くさせてしまう魔法の話術は、誰かに似ている。大泉洋だ。「速水=大泉」の公式は、表紙や扉ページの写真以外に、会話の中からも強烈なリアリティが溢れ出している。
 しかし、速水のそれは高い確率で「つくり笑い」であることを、文中から察することができる。どこまでが演技で、どこからが素顔なのか? 速水は何故ここまで雑誌と小説とを愛し、自らが編集者であることにこだわるのか。やがて、図地反転のサプライズが発動する。「速水=大泉」に必ず、まんまと騙される。
 本書を読み終えて真っ先に想起したのは、塩田のデビュー作『盤上のアルファ』。将棋の棋士と新聞記者をW主人公に据えた同作のテーマは「逆転」だ。出版界の未来に新たな可能性を投じる「企画」として抜群に高品質でありながら、デビュー作から積み上げてきたテーマや作家性が十全に発揮されている。本作を最高傑作と呼ばずして何と呼ぶか。 評者:吉田大助(「野性時代」2017年10月号)
出版界と大泉洋という二つの「ノンフィクション」を題材に書く社会派にして本格ミステリー

 『罪の声』を発表し、社会派ミステリーの新たな旗手に名乗り出た、塩田武士。第七回山田風太郎賞を受賞し「本屋大賞2017」第三位に輝くなど、日に日に支持の声が高まるなかで刊行された『騙し絵の牙』は、ノンフィクションを題材としている、という点で『罪の声』と共鳴する。ひとつは、市場規模は右肩下がりで救世主到来を待つ、出版界およびエンタメ産業の現状というノンフィクション。もうひとつは、誰もが知る国民的俳優である、大泉洋の存在というノンフィクションだ。奥付には、次のようなクレジットがある。「モデル 大泉洋」。映像の世界には最初から俳優のイメージを取り入れた役を作ろう、という「当て書き」の文化がある。本書は、主人公に大泉洋を「当て書き」して執筆された、前代未聞の小説だ。
 主人公は出版大手の薫風社で、カルチャー誌「トリニティ」の編集長を務める速水輝也。40代半ばの彼は、同期いわく「天性の人たらし」だ。周囲の緊張をほぐす笑顔とユーモア、コミュニケーション能力の持ち主。部下からの信頼も厚いが、苦手な上司・相沢から廃刊の可能性を突きつけられ、黒字化のための新企画を探る。芸能人の作家デビュー、大物作家の大型連載、映像化、企業タイアップ……。
 編集部内の力関係を巡る抗争やきな臭い接待の現場、出版業界に関する深い議論のさなかでも、ひとたび速水が笑顔を繰り出せば硬い空気がふっとやわらぐ。ひょうひょうとした速水の語りを発端とする登場人物たちの掛け合いがいちいち楽しい。相手も面白くさせてしまう魔法の話術は、誰かに似ている。大泉洋だ。「速水=大泉」の公式は、表紙や扉ページの写真以外に、会話の中からも強烈なリアリティが溢れ出している。
 しかし、速水のそれは高い確率で「つくり笑い」であることを、文中から察することができる。どこまでが演技で、どこからが素顔なのか? 速水は何故ここまで雑誌と小説とを愛し、自らが編集者であることにこだわるのか。やがて、図地反転のサプライズが発動する。「速水=大泉」に必ず、まんまと騙される。
 本書を読み終えて真っ先に想起したのは、塩田のデビュー作『盤上のアルファ』。将棋の棋士と新聞記者をW主人公に据えた同作のテーマは「逆転」だ。出版界の未来に新たな可能性を投じる「企画」として抜群に高品質でありながら、デビュー作から積み上げてきたテーマや作家性が十全に発揮されている。本作を最高傑作と呼ばずして何と呼ぶか。 評者:吉田大助(「野性時代」2017年10月号)

※画像は表紙及び帯等、実際とは異なる場合があります。

おすすめコメント

大泉洋 コメント

今回「騙し絵の牙」のカバーを担当させてもらいました。
もともと私をイメージして塩田さんが小説をお書きになられたというちょっと変わった作りの小説です。そもそも、この「騙し絵の牙」の発案の出発点というのが、雑誌「ダ・ヴィンチ」の表紙に出るとき、おすすめの本を一冊選ばなければならなかったことなんです。私は表紙撮影がある度に、「大泉エッセイ」を担当してくれていた同編集者に、いつも「お薦めの本、ない?」と、聞いていたんです。“映像化されて、私が主演をできるような小説”をと。それを、毎回訊かれるのが

彼女はめんどくさくなったんでしょうね。「じゃあ、もう大泉さんを主人公としてイメージした本をつくります!」と言ったのが始まりなんです。
今回速水というやたらかっこいい雑誌の編集長が出てくるのですが、あくまで塩田さんが私をイメージしたらこうなったというキャラクターです。たいがいダメなお父さんを演じるのが多い私ですが、今回は実に大人なかっこいい男で、この速水に扮してカバーも撮影しました。中にも私の写真が入っておりまして、私の写真集と言っても過言ではございません!

でも今、何より怖れているのが、この小説が映画化されたとき、速水役が私ではない、ということです。映画館で「特報」を観て、「騙し絵の牙」ってタイトルが出てきてるのに、主演俳優が違っていて「あー! 俺じゃない」って。
本書の帯のキャッチに<最後は“大泉洋”に騙される>ってあるんだけれど、<最後は“大泉洋”が騙される!>って。実はそれが“騙し絵の牙”だったんだと。それだけは避けたいですね。

塩田武士 コメント

実在の俳優、それも唯一無二の役者をアテガキにして小説を書く──。
芸能事務所の方と編集者と打ち合わせを続け、「完全アテガキの社会派小説」という未知の世界を前に何度もプロットを修正。新時代のメディア・ミックスに備えました。もちろん、大泉さんとも打ち合わせをし、その場で非常に鋭く厳しい読者目線のアドバイスをいただいたことにより、物語はさらに進化しました。それぞれの立場で、真剣に作品について考え続けた結果、私のイメージを遥かに超えた「小説の核」が出来上がったのです。

さらに主人公の速水輝也と大泉洋さんの「完全同期化」を目指し、私は大泉さんの映画やバラエティ番組作品中に速水が接待でモノマネをするシーンがありますが、それはほぼ全てが大泉さんのレパートリーです。改めて実感しました。こんな振り幅の大きい俳優はいない、と。取材、執筆に4年。今は「もうできることはない」という清々しさが胸の内にあります。「物語の内容が現実とリンクしていく可能性がある」──そう気づいたとき、読者の皆さまはどんな未来予想図を描かれるでしょうか?
本を愛する全ての人たちへ。さぁ、新しい扉を開いてください。

プロモーションムービー

表紙撮影時のメイキング映像

「騙し絵の牙」感想・レビュー
※ユーザーによる個人の感想です

  • 『罪の声』に続いて、塩田武士2作目です。大泉洋主演小説という試みはユニークですが、特に小説の内容には影響していないような気がします。最初タイトルからミステリなのかと思って読み始めましたが、構造不況業種 『罪の声』に続いて、塩田武士2作目です。大泉洋主演小説という試みはユニークですが、特に小説の内容には影響していないような気がします。最初タイトルからミステリなのかと思って読み始めましたが、構造不況業種、出版業界のリアルでした。まるでノンフィクションのような感じです。今後どのようにして電子メディアに移行するのでしょうか? …続きを読む
    starbro
    2017年10月18日
    817人がナイス!しています
  • 雑誌「トリニティ」の編集長を務める速水輝也。編集者として作家からの信頼も厚く、部下からも慕われ、社内外で一目置かれる存在。斜陽の出版界で雑誌の廃刊危機を回避し、小説の発表の場所を守る為に奮闘する。キレ 雑誌「トリニティ」の編集長を務める速水輝也。編集者として作家からの信頼も厚く、部下からも慕われ、社内外で一目置かれる存在。斜陽の出版界で雑誌の廃刊危機を回避し、小説の発表の場所を守る為に奮闘する。キレ者でありながら、ユーモアのあるトークで場を和ませ、人の心を掴む速水がとても格好良い。速水の軽妙な言葉が大泉さんの口調に脳内変換され、映像が浮かんでくるようでした。この仕掛け自体が速水編集長の企画ではないかと思わせる二重の仕掛けか?どんでん返し以降が少し冗長な感じがしたが、意欲的な作品で、とっても面白かった。 …続きを読む
    ウッディ
    2018年07月21日
    714人がナイス!しています
  • 帯に<最後は“大泉洋”に騙される>と有りますが… 何々、では質の良い小説を世に出すために、紙媒体の雑誌をを残すために四面楚歌の中 天性の「ひとたらし」を如何なく発揮して八面六臂の奮闘を見せたのはエピロー 帯に<最後は“大泉洋”に騙される>と有りますが… 何々、では質の良い小説を世に出すために、紙媒体の雑誌をを残すために四面楚歌の中 天性の「ひとたらし」を如何なく発揮して八面六臂の奮闘を見せたのはエピローグのための仕掛けだったってこと!? 「世渡り上手の罰当たり」と呼ばれた私としては大泉(速水)さんの生きざまに拍手喝采だったけど最後の展開は向うが一枚上手でしたね(笑)。 Bravo♪ …続きを読む
    射手座の天使あきちゃん
    2019年01月20日
    607人がナイス!しています

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著者紹介

写真:塩田 武士 しおた・たけし

塩田 武士 しおた・たけし

1979年兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部卒。新聞社在職中の2010年『盤上のアルファ』で第5回小説現代長編新人賞を受賞し、デビュー。2016年『罪の声』で第7回山田風太郎賞を受賞、「週刊文春」ミステリーベスト10で国内部門第1位となる。2017年本屋大賞では3位に。他の著作に『女神のタクト』『ともにがんばりましょう』『崩壊』『盤上に散る』『雪の香り』『氷の仮面』『拳に聞け!』がある。

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